第8章

私のスマホは一晩中鳴りっぱなしだった。不在着信、メッセージ、留守番電話。深夜零時ごろに電源を切ったけれど、由香里のスマホはまだ鳴り続けていた。

「鈴木奥さんから三回も電話があったわ」と由香里が報告した。「市長の奥様、クラブの香織さん、それに歯医者さんからまで」

「なんて言ってるの?」

「まちまちね。応援してくれる人もいる――〝すごく勇敢だった〟とか、〝正しいことをした〟とか。でも他の人たちは……」彼女は顔をしかめた。「内々で処理すべきだったって考えてるみたい」

私はコーヒーを淹れながら、小さなテレビで朝のニュースを見ていた。まだ私たちのことは何も報じられていない。でも、この...

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